着床不全
着床不全とは
着床不全とは、40歳未満の方が良好な胚を4個以上・3回以上、体外受精により移植しても妊娠しないケースを言います。
着床不全の原因
- 受精卵(胚)に問題がある
- 子宮内の環境に問題がある
- 母体側の免疫寛容に問題がある
着床不全の検査・診断・治療
着床不全は下記のような検査で診断し、原因に応じた治療を行います。
胚自体の検査
- 精子・卵子・胚の再評価
- 着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)
母体の検査
① 子宮に異常がないか確認
【検査項目1】
- 超音波検査
- 卵管疎通性検査
- 子宮筋腫
- 子宮腺筋症
- 子宮筋腫
- 子宮奇形
- 卵管水腫
【検査項目2】
- 子宮鏡
- 子宮内膜組織診(形質細胞マーカーCD―138 免疫染色)
上記検査によってわかる疾患
- 慢性子宮内膜炎
②着床不全関連検査 (ERA-EMMA-ALICE)
下記の3つの検査により「着床の窓」を特定し、子宮内の細菌バランスと病原菌の有無、各細菌の割合などを確認します。
- 子宮内膜着床能検査(ERA)
- 子宮内マイクロバイオーム検査(EMMA)
- 感染性慢性子宮内膜炎検査(ALICE)という3つの検査を行います。
③自己免疫因子
- 抗リン脂質抗体・ループスアンチコアグラント・抗核抗体・甲状腺抗体など
- 血液凝固検査; aPTT・第12因子・protein C & S活性
④同種免疫因子
- Th1/Th2比
⑤栄養因子
- BMI値
- ビタミンD
- 亜鉛
⑥染色体因子
- 夫婦染色体検査
不育症
不育症とは
原因ははっきりとわかっていませんが、下記のようなリスクにより引き起こされると考えられています。
また、妊娠する方のうち、毎年数万人程度で不育症が起こる可能性があると言われています。
不育症の原因
抗リン脂質抗体症候群
抗リン脂質抗体という自己抗体によって、血栓症や妊娠合併症が引き起こされる自己免疫疾患です。
流産・死産などの原因となります。
子宮形態異常
子宮の形態に異常があるため、流産が起こりやすくなります。
染色体異常
受精卵では高い確率で染色体の異常が起こり、多くノケースで流産の原因となります。
内分泌異常
甲状腺機能異常や糖尿病などの内分泌異常が原因で、流産のリスクが高まるとされています。
血液凝固異常
血液が固まりやすくなる異常により、流産・死産が引き起こされます。
その他
その他、喫煙、過度な飲酒、過度なカフェインの接種、肥満なども流産の発生に関わっていると言われています。
不育症の検査・診断
不育症は次のような検査にて診断を行います。
染色体検査
血液検査にて染色体の異常の有無を確認します。
子宮形態検査
卵管疎通性検査、超音波検査(エコー検査)、子宮鏡検査、MRI検査などにより、子宮の形態に異常がないか調べます。
内分泌検査
血液検査を実施して、ホルモンの状態や、糖尿病の有無などを確認します。
絨毛(じゅうもう)染色体異常
絨毛(じゅうもう:妊娠初期の胎盤の一部)の組織を調べて、染色体に異常がないか確認します。
抗リン脂質抗体検査
血液検査を実施して、抗リン脂質抗体という自己抗体を調べます。
不育症の治療
各原因に応じた治療を行い、次回の妊娠に向けて対応します。
抗リン脂質抗体症候群
妊娠中の血栓症のリスクを高める抗リン脂質抗体症候群に対して、低用量アスピリン/ヘパリン療法などを行います。
子宮形態異常
従来、子宮形態異常に対しては開腹/腹腔鏡手術が行われていましたが、近年では子宮鏡下中隔切除術(開腹せずに中隔を切除する方法)が主流となっています。
内分泌異常
甲状腺機能異常や糖尿病など、内分泌異常の原因に応じた適切な治療を行います。
夫婦染色体異常
夫婦の染色体に異常がないか調べて、何らかの異常が認められる場合には、それに応じたカウンセリングを行います。